祈る・祝う

神々

神をアイヌ語で「カムイ」といい、神に祈ることを「カムイノミ」といいます。アイヌの人々は、カムイ・モシ─神々の住まう世界、アイヌ・モシ─人間の住む世界、ポクナ・モシ(ポナシ、カムイ・モシともいいます)─死後の世界という3つの世界を創造し、アイヌ・モシに住む人間─アイヌは、カムイ・モシから来訪する神々とともに生きていると考えてきました。

アイヌの人々のいう神々とは、太陽や月、山、海、川、風、火など、私たちのいう自然、ヒグマやシマフクロウ、キツネ、キツネ、ウサギ、タヌキといった動物、ギョウジャニンニク、オオウバユリなどの植物、舟、鍋、ゴザなど自分たちの手でつくり出す道具類、天然痘、風邪といった病気など、アイヌの周りにあるすべて─アイヌが生きていくうえで必要なもの、役に立つもの、アイヌの力の及ばないものはカムイであり、私たちが目にしているのは、カムイがアイヌ・モシに滞在しているときの姿であると考えました。これらの神々のうち、太陽や月などの自然神は恒常的にアイヌ・モシにあって、アイヌに役立っていますが、動物神や物神は、カムイ・モシとアイヌ・モシを行き来して、アイヌの生活を支えています。

動物神や物神は、普段はカムイ・モシでアイヌと同様の姿形・生活をしていますが、ある時期がくると、アイヌの役に立つためにアイヌ・モシを訪れます。これは、神々の義務・務めとされています。クマを例にとって見ますと、クマ神は、自分の家にある毛皮と爪を身にまといクマの姿となってアイヌ・モシを訪れ、アイヌの出迎えを受けます(狩猟でクマを射止める)。コタンで歓待され、お土産をいっぱいもらい、アイヌに送られて(霊送り儀礼)カムイ・モシに帰ってきます。このときのクマ神のアイヌへのお土産は、毛皮と肉と肝です。いずれも貴重なものです。また、冬の冬眠中のクマを射止めて仔グマを捕獲したとき、コタンに連れ帰って1年ないしは2年養育した後、盛大な別れの宴を開いてクマ神をカムイ・モシに送り帰します。この儀礼がイオマンテ─クマの霊送りです。カムイ・モシに帰ったクマ神は、仲間の神々を集めてお土産を分配し、アイヌ・モシでの歓待の様子などを話します。そうすると、仲間の神々も、「我々も来年は訪れてみよう」ということになり、翌年、多くの神々がアイヌ・モシを訪れることになります。この多くの神々の来訪は、アイヌが狩猟でたくさん獲物(食糧)を得ることができるということであり、食糧の安定確保を意味しています。漁狩猟・採集を生業としたアイヌの人々の食糧を求める想いがここにあります。

祈る

 イオマンテなどの大きな儀礼はもちろんですが、アイヌの人々は日々の生活のなかで神々への祈り─カムイノミを欠かしませんでした。カムイノミは男性が行う厳粛なものであり、女性がカムイノミをすることはありません。カムイノミのなかで最初に行うのが、炉にいるアペフチカムイ(火の姥神)への祈りです。アペフチカムイは最も身近なカムイですが、強い力を持っています。一日のはじまり、猟に出るとき、催事を行うときなど、必ず最初にアペフチカムイに祈りました。

 カムイノミに用いる道具として欠かすことのできないものに「イクパスイ」があります。イクパスイは、アイヌの言葉と献酒をカムイに届けてくれます。長さ30㎝、幅2㎝、厚さ3㎜ほどの薄い板状のものですが、表面にはさまざまな文様が彫られており、男性の彫刻の技を見ることができます。漁狩猟には必ず携帯し、行く先々でのカムイノミに用いました。イオマンテなどの大きな儀礼では、キケウパウイという表面に羽根のような削りかけのついたパスイが用いられます。イクパスイが何回も用いられるのに対して、このキケウパスイは儀礼のたびにつくられ、儀礼が終わると神々に持たせるといって、屋外のヌササン(祭壇)に祀ってあるイナウ(木幣)に結びつけてしまい、二度と使いません。現在、博物館等で見るキケウパスイはほとんどが複製品です。


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