アイヌ語で家をチセといいます。チセは、壁や屋根材として用いた材料などによって、いくつかの地域性が見られます。たとえば、茅を用いたチセは、胆振地方や日高地方をはじめとして、北海道内で一番多く見られます。また、笹を用いたチセは、主に上川地方に多く見られます。さらに、白樺(しらかば)など、樹皮を用いたチセは、北海道東部、根室地方を中心に見られます。これらのチセは、いずれもその地域において、最も手に入りやすい材料が使われています。
 チセはまた、工法、構造(こうぞう)、各部位の呼称(こしょう)などにも地域性が見られます。
 さらに、茅葺(かやぶ)きのチセは、本州の茅葺(かやぶ)きの家と比べて、いくつかの特徴があります。まず、北海道内で共通した大きな特徴として、@屋根が段葺(だんぶ)きであること、次に、地域性を持ちますが、A屋根を地上で組み立て、柱に乗せる、B屋根にケトゥンニと呼ばれる三脚構造(さんきゃくこうぞう)を持つ、C柱が内側に傾斜(けいしゃ)して、「外ふんばり」になっていることなどが挙げられます。
 このように、地域性とともに、いくつかの特色を持ったチセですが、さらに、チセを建てるに当たり、信仰と深く関わって、大きな「決まり」がありました。
 チセの多くが長方形をしておりますが、必ず長軸方向に上手と下手を持ち、上手に神窓がつくられ、下手に入口がつくられます。上手といわれる方向(方角)には地域性があり、イ.東、ロ.川上、ハ.高い山、ニ.海、などがあります。また、上手の外には、幣柵(ぬささん)(祭壇)や仔熊飼養檻(こぐましようかん)など、神々と関わりの深い施設がつくられ、下手の外には、人間が使う便所などがつくられました。
 明治以降、生活文化の大きな変化によって、チセは徐々(じょじょ)に姿を消し、現在、生活の場としてのチセは一軒もありません。しかし、その建築技術は現代に伝えられ、北海道各地で復元されたチセを見ることができます。
 今回、マニュアル事業で建てたチセ(以下、「ポンチセ」と呼びます)は、屋根や壁材に(かや)を用いた、母屋が東−西(桁行):3間(5.4m)、南−北(梁間):2間(3.6m)、モセム:1間(1.8m)という大きさのもので、古い時代の造りを基本にして、(くぎ)などを使わずに建ててみましたが、一部、新しい試みも取り入れています。

※ここでいう「茅」は、「よし」や「あし」のことです。






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